Amazonに飲み込まれるアメリカ小売業界

ハロウィンが終わり、アメリカでは本格的に2019年のホリデーシーズンが到来しました。ホリデーシーズンは1年で最大のショッピングシーズンということで、Eコマースも実店舗もリテール業界は例年かなり早い段階からこの時期のために準備を進めます。しかしこのホリデーセール価格戦争においても、Amazon(アマゾン)が一歩先を行っているようです。

Profiteroの最新調査によると、Amazonの価格は他のオンラインショッピングサイトよりも約20%安いことが分かりました。アメリカの大手小売店との比較結果は以下のようになっています。

 

<対Amazonにおける販売価格の平均データ>

Walmart(ウォルマート):+4.1%

Target(ターゲット):+10.6%

Best Buy(ベストバイ):+16.7%

 

商品カテゴリーによってばらつきがあり、例えばWalmartはベビー用品においては0.2%しかAmazonと差はありません。とはいえ、総合的にみて価格でAmazonを下回るのはかなり難しい状況と言えそうです。

アメリカの小売業界はこの数年で激震に見舞われています。Eコマースの普及、スタートアップの増加、大手小売り・ブランドの倒産など大きな変化の中にあり、その震源地がAmazonであることは疑いようのない事実です。

 

2019年第1四半期のリテールストアの開店と閉店

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こちらは2019年1月~3月のアメリカにおける、リテールショップの開店と閉店の店舗数ランキングです。新規開店数トップはDollar General。郊外への出店を中心とするディスカウント系のお店です。2位のDollar Treeはいわゆる百均ストアで、3位のFamily Dollarと同じ会社が運営しています。トップ10を見ると全体的にディスカウントショップが多いことが分かります。右側の閉店店舗ですが、最も多かったのはPayless ShoeSourceの2,100店舗。2019年2月に2回目の破産申請を行い、アメリカとカナダの全店をクローズすると発表しました。

Payless ShoeSourceのように市場から退場を余儀なくされるリテーラーがある一方で、ディスカウント系のように勢いのあるストアもあり、一概に実店舗すべてがEコマースによって駆逐されているわけではありませんが、実店舗の出店・運営には過去とは異なる現代消費者の購買行動パターン・ニーズを捉えた戦略が必要となっています。

 

Amazonの登場による消費者の変化

アメリカ人の約2/3が利用し、米国全体のオンラインショッピング売上げの49%を占めるAmazonは現代のインフラと言って間違いありません。市場を拡大するプロセスにおいて、Amazonは多様化・肥大化する顧客のニーズに対応してきました。

その結果、消費者は今では誰でも、欲しいと思ったものを即座にスマートフォンで仕様の確認をし、レビューをチェックし、価格を比較し、数クリックで支払い、2日後には自宅で受け取れるようになりました。つまり商品の検索から比較検討・支払い・受け取りまでがシームレス。現代の消費者にとってはこれがスタンダードであり普通の購買プロセスなのであって、これより劣るサービスはわざわざ利用する必要がありません。私たちが今生きているのはそういう時代なのです。

 

Retail Apocalypse – 時代に取り残されないために

先日、破産申請を行ったForever21(フォーエバー21)は記憶に新しいですが、SEARS(シアーズ)、ToysRUs(トイザらス)、American Apparel(アメリカンアパレル)など、アメリカでは大手リテーラーの市場撤退が相次いでいます。破産まではいかなくとも、大規模に店舗をクローズして事業縮小をせざるを得ない倒産予備軍も多く、これら一連の動きはRetail Apocalypse(リテールアポカリプス)と呼ばれアメリカでは注目のビジネストピックです。

破産原因の諸々は企業によってそれぞれ事情が異なりますが、共通して言えることはこれらの企業がAmazonの普及以降、消費者の購買行動・消費パターンが変化したことに気づかず、対応が遅れたことが致命傷となりました。スマートフォンから詳細がすぐに確認できること、価格が安い(競争力がある)こと、オンラインで簡単に購入ができること、スムーズに配送されること(または店舗で受け取りができる)は今の消費者が当たり前に求める要素であり、今後これらに対応できない小売りは消費者から見放されることになります。

AmazonのCEOのJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)は消費者の普遍的な要求として『品揃え』『価格』『配送スピード』の3つを挙げています。つまりこの分野でAmazonが今後も手を抜くことは無く、さらに投資を重ねて改良していく側面と思われます。アメリカではWalmartやTargetのように自分たちも設備投資をしてAmazonに対抗する姿勢を見せる企業と、Kohl’sが店舗でAmazonでの購入品の返品対応を始めたように手を組む姿勢の企業と、対応が分かれています。小売り側だけでなくブランド側にとっても、Amazonに出店するかどうかは企業によって判断が分かれるところで、それが後々大きな分岐点となることもあります。対抗するか共存するか、自社のブランディングとリソース、そして顧客のニーズと性質をよく見極め、時代に取り残されないようにしましょう。