YouTubeとブランドセーフティ問題への関心の低下

過激なコンテンツやモラルを欠いた表現がたびたび問題となるYouTubeですが、一時期、広告主の大きな懸念であったブランドセーフティに対する関心度はやや低くなっているようです。

事の発端は2017年に、白人至上主義者やヘイトスピーチ扇動者たちの動画に大手ブランドの広告が表示されたり、イスラム教過激派によるテロ活動を助長するような動画に英国選挙の広告が表示されていたとタイムズ・オブ・ロンドン(Times of London)が報じたこと。これらの報道をきっかけに『ブランドセーフティ』はマーケティングに携わる人々の間で新たな脅威として浮かび上がり、ロレアル(L’Oréal)や通信大手のAT&T、ベライゾン(Verizon)など数百社が一時期YouTubeから広告を引き上げる事態となりました。

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これはエージェンシーや広告主など、オンライン広告に関わるアメリカ人を対象とした「ブランドセーフティはマーケティング活動に深刻な問題となりうるか?」というアンケートの結果です。2017年の90%から、2018年は60%に減少していることが分かります。

これにはYouTube側、そして実際に広告出稿を手掛ける広告代理店各社の改善へ向けた対策の効果とも言えます。問題の発生以降、YouTubeはYouTube上のどのようなチャンネルも最低1万ビューを獲得していないと広告を表示できないようにな仕様へ変更し、また疑わしいコンテンツをチェックするためのスクリーン要員を追加で採用するなどの対応を数ヶ月の内に実施。またエージェンシー側も、サードパーティによる広告測定サービスの利用を推進し、広告が実際にどこに流れたかある程度把握ができるようになりました。

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完璧ではないにしてもこれらの努力により、一時期YouTubeを離れた広告主もほとんどが戻っていると思われています。上の表はアメリカ人の業界関係者が考える2019年のデジタルメディアにとっての懸念事項の調査結果です。1位は個人情報保護、2位は効果測定方法、3位は広告詐欺となっており、ブランドセーフティが今年、より大きな課題になると考えているのは全体の36.9%。Facebookの情報漏洩や不透明な広告運用の実態など目下の問題を前に、ブランドセーフティ問題は一定の落ち着きを得たと言えます。

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その背景にはYouTubeに頼らざるを得ない広告主側の事情もあります。上はYouTubeの広告収益の推移。2017年にブランドセーフティ問題があった後も、成長速度は多少鈍化しているものの収益は伸び続けることが予想されています。TikTokなどの新興メディアや、Facebookが多額の資金を投入して拡大しようと躍起になっているWatch、IGTVなどの代替プラットフォームはあるものの、YouTubeの一強独占状態を崩すには至っていません。

とは言え、動画メディア市場はまだまだ成長中の未開のエリア。いつこれらの問題を越える新たな脅威が出現し、状況を一変させてしまうということがあるかも分かりません。